診療内容・専門分野

  埼玉医科大学の小児心臓外科は、小児心臓科との密な連携のもとに、小児心臓ICUの設置およびベッド数の拡充がはかられ、より多くの手術を行うことが出来る体制が整いました。2007年4月の開院以来の小児心臓手術症例数は、350例を超えました(2009年4月現在)。当院は他の大学病院とは異なり、先天性心疾患の診断から治療、フォローアップに至るまで、独立した小児専門の診療科によるチーム医療を行うことができるように、小児心臓科と小児心臓外科が協力して診療を行う体制が整っております。小児専用の病棟と小児心臓専用のICUを備え、どのような先天性心疾患の患者さんにも、いつでも手術の対応ができる体制になっております。
小児心臓ICU
小児心臓ICU
当院の小児心臓手術の特徴
(1)新生児期手術
   当院の小児心臓科は埼玉医科大学病院および埼玉医科大学総合医療センター、さらに近隣の産科病院において胎児エコーによる出生前診断を積極的に施行しています。心疾患を有する胎児の出産を管理し、出生直後から小児心臓科と小児心臓外科が診断・治療を行う体制をとっています。 これにより、新生児期に手術を必要とする疾患の手術症例が増え続けています。
従って重症複雑心奇形の手術の占める割合が高いのが当院の特徴です。疾患としては、左心低形成症候群、完全大血管転位症、総肺静脈還流異常症、単心室症および類縁疾患、大動脈縮窄症、肺動脈閉鎖症等が新生児期手術の対象です。かつては不良であったこれらの疾患の手術成績は、近年になって著しく向上して来ました。われわれは次のステップとして、成長時のQOLを向上させることを念頭においた治療戦略と手術方法の改良に取り組んでおります。
複合型手術室
複合型手術室
(2)乳幼児期、学童期手術
   心室中隔欠損症、ファロー四徴症等がもっとも多い疾患ですが、単心室症および類縁疾患に対する段階的手術(最終はフォンタン型手術)の占める割合が多いのが当院の特徴です。学童期の心房中隔欠損症や心室中隔欠損症の手術では、安全な範囲内で皮膚切開をできるだけ小さくする小切開手術を積極的に行っています。また、無輸血手術、輸血量を少なくするための体外循環にも積極的に取り組んでいます。
(3)成人先天性心疾患
   近年注目を集めている幼少期に先天性心疾患の手術を受けたのち成人となった患者さんたち、GUCH (Grown Up Congenital Heart patient)に対する再手術にも力を入れています。小児期に心臓手術を受けて、その後に成人した患者さんのなかには疾患による必然性からいろいろな合併疾患のために、薬物治療・カテーテル治療や再手術を要する場合があります。このような患者さんを包括的に治療するには、小児循環器科による診断とカテーテル治療、循環器内科による不整脈治療、経験豊富な心臓外科医の3者が揃っている必要があります。埼玉医科大学国際医療センター心臓病センターは最新の診断機器とスタッフが揃っており、このような困難な疾患群に対する最良の治療を提供できる体制が整っています。
(4)ハイブリッド手術
   小児心臓科と協力して、手術とカテーテル治療を組み合わせたハイブリッド手術に積極的に取り組んでいます。これまで左心低形成症候群のような疾患に対しては、新生児期に体外循環を用いた侵襲度の非常に高い姑息的な手術を行わなければなりませんでした。左心低形成症候群の中でもハイリスク群に属する場合や重症度の高い単心室症やその類似疾患では、新生児期に手術を必要とする他疾患に比べ、脳合併症のリスクも高く手術成績も決して良好とは言えません。このような場合に、侵襲度の低い手術とカテーテル治療を同時に行うことで新生児期手術のリスクを軽減し、早期退院を可能として次の乳児期の手術に備える治療を行っています。その他、狭窄した血管に対して手術中にカテーテルによる治療を追加し、手術のみでは不十分とならざるを得ない部位の治療も行っています。当院はこのようなハイブリッド手術を行うための装置を備えた複合型手術室を完備しています。
(5)補助人工心臓治療
   小児期の重症心不全症例(拡張型心筋症など)への補助人工心臓(LVAD)治療も積極的に行っており、当科(重症心不全治療部門と合同)では15歳以下の小児重症心不全5症例(3歳-15歳)にLVADを装着した経験を持っております。3歳のLVAD装着例は国内最年少症例です。